【12月11日開催】「安保3文書」1年を問うシンポジウム――「戦争の時代」を拒み、平和の選択を――
政府が国家安全保障戦略をはじめとする安全保障関連3文書(「安保3文書」)を閣議決定してから1年が経とうとしています。閣議決定の直前に、私たち平和構想提言会議は、「戦争ではなく平和の準備を――“抑止力”で戦争は防げない」(http://heiwakosoken.org/teigenkaigi/ )と題する平和構想提言を発表しました。私たちはその中で、敵基地攻撃能力の保有や軍事費倍増を含む一連の政策が、日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との関係を悪化させ、軍拡競争を助長させるきわめて危険なものであると指摘しました。そして、こうした決定が憲法の下での民主的手続きを経ずに強行されていることに強く異議を申し立てました。
それから1年の間に、岸田政権は大軍拡政策を次々と進めています。経済や社会の隅々にまで軍事化が広がり、憲法によって権力を統制するという立憲主義は瀕死の状態といえます。
世界では、ロシアによるウクライナへの侵略戦争や、イスラエルによるガザ地区への無差別的攻撃により、無数の民間人が命を奪われ傷つけられています。国際法の基本原則を無視した横暴が繰り広げられています。
世界が「戦争の準備」どころか、「戦争の時代」へと突入する勢いであるなか、東アジアで破滅的な戦争が起きるのを回避し、平和を選択するために何ができるのか。この1年を振り返りながら、研究者やNGO活動者の視点から問題を提起します。
「安保3文書」1年を問うシンポジウム
――「戦争の時代」を拒み、平和の選択を――
▼日時 2023年12月11日(月)17時~
▼場所 参議院議員会館 B109会議室
▼形態 会場とオンラインのハイブリッド
(会場参加の方は、16時40分~参議院議員会館1階で通行証を配布します)
▼発言者(*印はオンライン発言を予定)
青井未帆(学習院大学教授)
池尾靖志(立命館大学)*
内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)*
岡田充(ジャーナリスト)*
川崎哲(ピースボート共同代表)
君島東彦(立命館大学教授)*
清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)*
佐々木寛(新潟国際情報大学教授)*
杉原浩司(武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表)
谷山博史(日本国際ボランティアセンター(JVC)前代表理事)*
中野晃一(上智大学教授)
※本シンポジウム開催に合わせて、声明「『戦争の時代』を拒み、平和の選択を」を発表しました。声明全文はこちら。
参加無料(カンパ歓迎)
参加登録 会場参加希望の方は、事前(12月11日(月)12時まで)に以下のフォームにご登録ください。
https://forms.gle/FXhjEBHaPSDUr3aG9
またはメールにて<shudantekijieiken@gmail.com> お名前をご所属をお知らせください。
オンライン配信
主催 平和構想提言会議
連絡先 平和構想研究会 <shudantekijieiken@gmail.com>
声明「『戦争の時代』を拒み、平和の選択を」を発表しました。
声明
「戦争の時代」を拒み、平和の選択を
平和構想提言会議
2023年12月11日
「安保3文書」から1年
政府が国家安全保障戦略をはじめとする安全保障関連3文書(「安保3文書」)を閣議決定してから1年が経とうとしている。閣議決定の直前に、私たちは、「戦争ではなく平和の準備を――“抑止力”で戦争は防げない」と題する平和構想提言を発表した。私たちはその中で、敵基地攻撃能力の保有や防衛費倍増を含む一連の政策が、日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との関係を悪化させ、軍拡競争を助長させるきわめて危険なものであると指摘した。そして、こうした「国のかたち」そのものを転換させるような決定が憲法の下での民主的手続きを経ずに強行されていることに強く異議を申し立てた。
「戦争する国家」へ突き進む日本
それから1年の間に、「安保3文書」の下で、岸田政権は大軍拡政策を次々と進めてきた。巡航ミサイル「トマホーク」を最大400発購入することを決め、うち半分の配備開始を2025年度に前倒しした。防衛費は、2024年度予算案で7.7兆円計上された。これは2023年度と比較して17%、2022年度と比較して42%増である。物価高が人々の生活を脅かすなか、財源の議論さえ置き去りにしたまま軍事が聖域になっている。円安の影響で、米国からの武器購入費や国産武器の開発費は増額しており、さらに膨張する可能性もある。
今年(2023年)6月には、「防衛基盤強化」の名の下で、国が軍需産業を育成する法律が野党の一部も賛成して成立した。日英伊で共同開発する次期戦闘機を第三国輸出することも視野に、殺傷武器の輸出解禁に向けた与党密室協議が大詰めを迎えている。
沖縄・石垣島には陸上自衛隊駐屯地が開設され、住民からの反対や不安の声をよそに、敵基地攻撃能力をもつミサイルの配備が進められようとしている。今年10月には、過去最大規模の日米共同実動訓練「レゾリュート・ドラゴン23」が沖縄県の与那国駐屯地から北海道の矢臼別演習場にいたる日本国内8カ所の演習場で行われた。日米一体で、まさに「戦争の準備」が進められている。
立憲主義の危機と社会の軍事化
こうした防衛・安保政策の大転換について、政府はもはや憲法との関係を論じようとすらしない。メディアの多くも、議論することを放棄して現状追認の報道に終始している。憲法により権力を統制するという立憲主義は、瀕死の状態である。
その一方で、社会の軍事化といえる動きが次々と進んでいる。全国の空港や港湾では、防衛力強化のためとして、平時から自衛隊が訓練で利用できるよう整備する動きがあり、全国で38施設が対象となると報じられている。土地利用規制法においては、対象地域の指定にあたり、政府が自治体側に「密告」ともいうべき情報提供を求めていることが明らかになった。
政府は、大学や学術界に対して軍事研究を行わせるための圧力を一層強めている。また、「経済安全保障」の名で「セキュリティ・クリアランス」(適性評価)導入のための法改定が準備され、企業や個人に対する国家による監視と管理の強化が進められている。
広がる戦争と国際法の危機
世界では、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が続き、イスラエルはガザ地区への無差別攻撃を行っている。こうして、無数の民間人が命を奪われ傷つけられている。元来、国家は武力の行使や威嚇をしてはならず、紛争は平和的に解決しなければならないというのが国連憲章の定めである。そして戦時においても、民間人を標的にしてはならないというのが国際人道法の定めである。これら国際法の基本原則をことごとく無視した横暴が繰り広げられている。
米国を中心とするいわゆる西側諸国は、ロシアによる国際法違反は厳しく非難しながらイスラエルに対しては即時停戦すら求めようとしていない。このようなあからさまな二重基準が、国際社会における法の支配そのものを揺るがしている。
今日世界で広がる戦争は、国際法秩序の揺らぎと共に、米国の覇権的影響力が弱まっていることも反映している。こうした中で日本が、世界を「西側」対「それ以外」の単純な二項対立でとらえ、米国との「同盟強化」一辺倒の外交政策をとり続けていることは、きわめて危険である。
2001年の「9・11テロ」に始まった米国中心の「対テロ戦争」は、20年を経て、失敗に終わった。軍事力は万能ではなく、戦争は問題を解決しないというその教訓を、決して忘れてはならない。
平和を選択せよ
1年前私たちは「戦争ではなく平和の準備を」と提言したが、それ以来世界は、戦争の準備どころか、「戦争の時代」へと突入する勢いである。このままでは、私たちが暮らす東アジアも、破滅的な事態を迎えかねない。
かつての2つの世界大戦を経て、国際社会は、戦争を回避するためのさまざまな規範を作り上げてきた。これらを無にしてはならない。今日でも、軍縮や信頼醸成、予防外交など、武力によらずに平和を構築する試みは続いており、さらに強化されなければならない。
その一例として、2021年に発効した核兵器禁止条約が挙げられる。同条約にはすでに世界の約半数の国が加わっている。今月初めに閉幕したその第2回締約国会議は、核抑止力に依存した安全保障からの転換を求める成果文書を採択した。「抑止力」を再検討する試みが、国際社会において進んでいるのである。
市民レベルにおいては、沖縄や台湾海峡を挟んだ対話、南北コリアを含む北東アジアのNGO対話、平和のための女性たちの対話と連帯など、さまざまな取り組みが進められている。
軍拡を押しとどめ、軍事力強化を平和外交に転換させ、資源を軍備から人々の命と暮らしへと振り向けなければならない。そのために、私たちは日本政府に以下の取り組みを求めると共に、国会での真摯な議論を期待する。
1. 防衛・安全保障政策の決定プロセスを民主化すること。与党・政府の密室協議での決定は許されない。国会での徹底的な審議、政府による説明責任、市民社会に開かれた熟議によって、昨年来の数々の軍拡政策を見直すこと。
2. 東アジアの軍事的緊張を緩和し信頼を醸成するための対話を促進すること。国家レベル、自治体レベル、議員レベル、そして市民社会レベルのそれぞれの取り組みが必要である。
3. 憲法前文が定める「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」との原点に立ち、平和主義を堅持し、国際法の普遍的適用を求めること。とりわけ今日のウクライナやガザにおける戦争犯罪やジェノサイドを許さない姿勢をとり続けるべきである。
平和構想提言会議
青井未帆 学習院大学教授 ※
秋林こずえ 同志社大学大学院教授
池尾靖志 立命館大学
内海愛子 恵泉女学園大学名誉教授
岡田充 ジャーナリスト
川崎哲 ピースボート共同代表 ※
君島東彦 立命館大学教授
清末愛砂 室蘭工業大学大学院教授
佐々木寛 新潟国際情報大学教授
申惠丰 青山学院大学教授
杉原浩司 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表
谷山博史 日本国際ボランティアセンター(JVC)前代表理事
中野晃一 上智大学教授
畠山澄子 ピースボート共同代表
前泊博盛 沖縄国際大学教授
(※は共同座長)